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こんな時どうする?〜社員が病気で休職した時の傷病手当の手続き

2017-06-14 10:37:00
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病気やケガで仕事ができなくなってしまった時、ご自身が抱えている仕事のことや、生活、通院、入院など発生する費用のことが多くの方は気になるのではないかと思います。会社としても、一緒に働いている社員が突然そのようなことになってしまったら心配になりますし、社員のためにどのようなことが出来るのか考えるのではないでしょうか。

そのような状況になったときの保障が大きく2つあります。
ひとつめは、病気で通勤中や業務上で発生した病気やケガを対象とした「労働災害保険制度(労災)」という会社が加入している社員の保障制度です。

ふたつめは、業務以外で病気やケガを対象とした「傷病手当」という制度になります。病気やケガをした社員本人、その家族の生活を守るための制度で、適用されると休職をして給与などが支給されない場合や減額された場合の期間も一定の手当金を受給されるものとなります。

今回は、傷病手当にスポットをあてて、制度の基本から傷病の発生から受給までの流れを調べてまとめましたので、手続きが必要になったときの備えとしておぼえていきましょう。

*手続きを行なう際は、加入している健康保険組合や会社の社労士など、手続きに詳しい専門の方への確認も忘れずにしてください。

 

【目次】
傷病手当とは
傷病手当の条件
実際に病気やケガで社員が休職するとき会社は何をすればいい?
- 0.事前準備
- 1.社員から病気やケガで仕事ができなくなった報告がされる
- 2.傷病手当金支給申請書を準備する
- 3.傷病手当金支給申請書を提出する
- 4.傷病手当金が支給される
傷病手当金の基本的な計算方法
傷病手当と標準報酬月額
まとめ

 

傷病手当とは

「傷病」と名前がある通り、病気やケガをして仕事を休職せざる負えなくなったときに支給される手当金のことを指します。

例えば、がんが見つかり早急に入院しなければならなくなったときや、事故にあって骨折してしまい安静にしなければならない状況になったときなど、いつも通り会社に行くことは困難ですよね。

会社に行けなくなり休職する場合、会社のほとんどは休職期間中の給与が無給であったり、減額していることがほとんどだと思います。しかし、給与が無給もしくは減額されてしまうと休職した社員は、生活や通院・入院などの費用のやりくりに困ってしまうかもしれません。

傷病手当金は、その期間のお金の保障をするために設けられた制度で、社員本人やその家族の生活を保障するものとされています。
支給するにあたり、対象となる条件や病院から仕事に就くことができないことを証明した書類の提出などがありますので、詳しく見ていきましょう。

 

傷病手当の条件

1.協会けんぽ、健康保険組合、共済組合に加入していること

傷病手当金は健康保険から支給されるものなので、国民健康保険に加入している人は対象から外れます。つまり、公務員や会社の健康保険に加入している社員が対象となる制度、ということです。

ただし、任意継続保険(退職後、継続して在職中と同じ健康保険組合に加入する場合の健康保険)に加入している人は傷病手当の対象外となりますので、傷病手当の申し出があっても受給できませんので注意しましょう。

 

2.業務外で発生した病気やケガの療養するための休職であること

通勤途中や業務中などのケガや、仕事が原因で病気になったときは、傷病手当の対象ではなく労災の対象になります。

例えば、がんになった場合、業務でアスベストに触れていたなど仕事が原因であれば労災、仕事以外の原因であれば傷病手当と対象の制度が変わる、ということになります。

 

3.仕事が出来る状態ではないこと

病気やケガの発生以前にできていた仕事ができない状態と医師に判断された場合、入院している場合に限らず自宅療養の場合も対象となります。

 

4.連続して4日以上仕事に就けなかった状態であること

療養のために休んだ最初の3日間を含む4日以上休むと、傷病手当の対象になります。
休んだ最初の3日間を待機期間と呼び、有給休暇・公休・欠勤・振替休暇など休み方を問わず、連続して休まないと成立しないものとなります。

例えば、「出社 → 休み → 休み → 休み → 休み → …」や「出社 → 休み → 休み → 休み → 出勤 → 休み → …」となって待機期間の成立となり、4日目から傷病手当の支給対象になりますが、「出社 → 休み → 出社 → 休み → 休み」といったように3日間連続の休みではない場合は、待機期間が成立せず傷病手当の対象から外れます。

 

5.休職期間中の給与が無給もしくは傷病手当金より少ない額であること

本来、傷病手当は病気やケガで休職している間の生活保障を行なうための制度なので、給与が支払われている期間は支給を受けられません。

だからといって、無給の人のみに適用されるということではなくて、傷病手当金の支給額よりも少ない金額で給与の支払があった場合は差額分が支給されます。

 

実際に病気やケガで社員が休職するとき会社は何をすればいい?

いざ、社員が病気やケガで休職してしまったら、それが会社ではじめて発生したものだったら、何をすればいいかわからず困ってしまいますよね。

過去の経験を元に、会社はどのようなことをしなければならないのか手続きの流れに沿ってお話します。

 

0.事前準備

まずは、傷病手当の案内が出来る担当を設置しましょう。
会社が制度を利用していなかったり理解していなければ、いきなり申請書類を提出してもスムーズに手続きできない可能性があります。そうなると、傷病手当金の受取りが遅れてしまうなど社員も会社も困ったことになるかもしれません。

例えば、
・担当窓口になる人を選任して傷病手当の概要をおぼえてもらう
・社内でマニュアル化して共有する
・部署の管理者などに傷病手当に関する講習を実施して理解度を上げる

など、理解している人を社内に作る工夫をしておくとスムーズな対応がしやすくなります。
また、不明点が発生したときに、加入している健康保険組合や会社の社労士に確認するなどの問合せルートを明確にしておくと、いざというときに役立ちます。

 

1.社員から病気やケガで仕事ができなくなった報告がされる

病気やケガで療養が必要になった場合、通常であれば会社あてに社員本人か社員の家族から報告の連絡があるかと思います。そのとき、以下の確認を最低限取ると良いです。

・おおよそどれくらいの期間療養が必要か、もしくは長期の療養が必要か
・医師から診断されたものか
*この時、業務以外か業務上のどちらで発生したのか一緒に聞きいておくと、傷病手当か労災か判断がしやすいです。

もし、業務外の病気やケガで療養期間が長くなりそうという回答でしたら、傷病手当の案内や申請書の準備をしてサポートをしましょう。

もし、診断がないと言われた場合は、医師にちゃんと「仕事につける状態なのか」「治療に必要な期間や費用がどれくらいか」などを確認してもらった上で、社員から報告をいただきます。

 

2.傷病手当金支給申請書を準備する

傷病手当金支給申請書は、加入している健康保険組合の窓口やサイトからダウンロードいただけます。
このとき、社員の状況によって必要な添付書類が変わるので、確認をしておくと書類を渡すときなどに一緒に案内ができてスムーズです。

例えば、交通事故によるものでしたら「第三者の行為による傷病届」というものが必要になりますし、社員本人が死亡した場合は家族の方から「戸籍謄本か戸籍抄本(いずれも本人が除籍になっているもの)」をいただかなくてはなりません。

 

3.傷病手当金支給申請書を提出する

休職が始まればすぐに手当金が支給される、というわけではなく長いプロセスがあります。申請までの基本的な流れは以下の通りです。

1.社員本人が記入出来るところだけ埋めてもらい、添付する書類の準備をしていただく

添付書類は、加入している健康保険組合によって異なりますので、確認をしておきましょう。
記載例や添付してほしい書類の一覧などを添えておくと、よりわかりやすくなります。

 

2.傷病手当金を申請したい期間が終了してから、医師に記入してもらうところを埋めてもらう

これは社員本人から医師に直接渡してもらう流れとなりますので、渡すタイミングはしっかり伝えてください。
申請したい期間の終了前に記入してもらうと、有効な書類として取り扱われない可能性がありますので、必ず「傷病手当金を申請したい期間の終了後」に記入してもらいましょう。

 

3.医師の記入が完了したら、会社が記入しなければいけないところを埋めて、健康保険組合に提出する

社員が会社を休んでいて給与を支払われていない、もしくは休職による減給がされている証明をしなければ、社員が傷病手当金をもらうことができません。

記入のタイミングは、必ず、医師が記入し終わった申請書を社員から受け取ったときになります。
ここでは、手当金の受給を待っている社員本人に配慮して早急に申請するとともに、手続きが延滞しないように以下の添付書類の準備と記載内容の記入漏れや誤りがないか確認をします。

・出勤簿の写し(出勤・有給・欠勤などの勤怠の状況が表示されていれば形式は問いません)
・賃金台帳の写し

*加入している健康保険や社員本人の状況によって添付書類が異なる場合がありますので、加入している健康保険組合や会社の社労士に確認してから提出しましょう。

 

4.傷病手当金が支給される

申請書の提出後、審査が行われ、支給されるかどうかの決定がされます。申請してからいつ頃に支給されるのかは審査状況によるため、明確ではありませんが1ヶ月程度かかるとみて良いかと思います。

書類に不備があればその分支給日が遅くなってしまうので、そのことも想定に入れておきましょう。

 

傷病手当金の基本的な計算方法

傷病手当金は給与の2/3、支給を始めた日から最長1年6ヶ月まで支給されます。ですが、毎月の給与は残業代などの手当によって変動しますよね。

休職期間中はそのような変動額を予測できないので、「標準報酬月額」という支給されている給与の平均額を等級で示したものを使用し、更に1日単位で支給額を算出していきます。

以下のケースを例にして計算していきましょう。

・東京都に住んでいる社員がケガで休職
・傷病手当金の支給開始日:平成29年5月1日から
・支給日数:30日

 

1.傷病手当金の支給開始日の前から遡って、過去1年間分の報酬平均額(標準報酬月額)を計算

例では、平成29年5月1日から傷病手当金をもらっているので、計算対象の期間は「平成28年6月〜5月」となります。

ただし、毎年9月に算定基礎と呼ばれる標準報酬月額の改定が入っているため、今回のケースだと「平成28年6月〜平成28年8月」「平成28年9月〜平成29年5月」に期間をわけて標準報酬月額を計算することになります。

 

「平成28年6月〜平成28年8月」の各月の標準報酬月額が260,000円だとすると、 260,000 × 3ヶ月 = 780,000円

「平成28年9月〜平成29年5月」の各月の標準報酬月額が320,000円だとすると、 320,000 × 9ヶ月 = 2,800,000円

 となります。標準報酬月額は健康保険組合や日本年金機構のサイトで最新のものをご確認ください。

 

2.算出した標準報酬月額から支給される手当の日額を計算

まず、「(780,000 + 2,800,000) ÷ 12ヶ月 ÷ 30日 = 9,900(10円未満四捨五入)」で標準報酬月額の日額を算出します。

そこから、「9,900円 × 2/3 = 6,600(1円未満四捨五入)」で傷病手当金の日額が求められます。

 

傷病手当と標準報酬月額

支給される給与などの報酬に変動があるから、病気やケガで休職した期間も算定基礎や月額変更で標準報酬月額(健康保険・厚生年金といった社会保険料)の改定をしなければいけないのではないか、と思う人もいるかと思います。

結論から言うと、病気やケガで休職をしても改定はできません。標準報酬月額の改定は以下の要件を満たさなければ対象とならないからです。

・昇給、降給で基本給与などの固定的賃金に変動があった
・変動した月を含む3ヶ月の出勤日数が17日以上ある
・変動した月を含む3ヶ月以上、変動前の月から標準報酬月額に2等級以上の差ができている

標準報酬月額の改定ができてしまうと、傷病手当金などの給付の際、給付額に大きく影響するため、受給する人に不利になってしまいますし、健康保険は加入している人の生活の安定を目的としているので、傷病手当は標準報酬月額の改定にはならないのです。

 

まとめ

傷病手当は、会社で健康保険に加入している社員が病気やケガをして働けないときの保障です。基本的には、在職中が対象となりますが、病気やケガが原因で退職せざるおえなかったなど、条件を満たせば退職後も受給可能ですし、2年間遡って申請することもできます。

ただ、傷病手当金をもらうための申請自体がバックオフィス業務を担っている人だけで完結しないので、一緒に働く社員にも理解してもらわなければならないものだと思います。

手続きが上手くいかない、会社で制度自体利用したことがないようでしたら、今後のためにも健康保険組合や会社の社労士に、会社では何をしたら良いのかなど一度相談することをおすすめします。

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