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経営者が知るべきワークライフバランスの基礎知識!変形労働時間制の仕組みと働き方

2017-07-20 15:10:00
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私たちの労働環境は日々、個人の価値やライフスタイルの多様化に伴い、仕事と生活のどちらも充実する考え(ワークライフバランス)が必要とされています。
そのような中で「変形労働時間制」など労働時間に関するキーワードを耳にしたり目にしたことがある方もいるのではないでしょうか。

会社では、労働時間が「9:00〜18:00」などと始業時間と終業時間が固定されていて、その範囲で働いている人も多いかと思います。
ただ、職種や業務の性質、繁忙期・閑散期の大きな差によって、固定された労働時間で働くと仕事の効率が良くないこともあります。

変形労働時間制では、始業時間や終業時間を決めて労働時間を適切に割り当てて働くことが出来る制度となります。

時期によって発生する労働時間の変動を減らし、効率良く業務を進められることによって、労働者にとっては能力を十分に発揮出来ることにつながりますし、会社にとっては労働時間の無駄が減らすことにもつながります。

働き方を広げてくれる柔軟な制度ですが、正しく理解しないと間違った運用をしてしまったり、労働基準法違反に繋がってしまうこともあります。
運用するにあたって知っておきたい制度の仕組みや基本を調べてまとめましたので、理解を深めていっていただければと思います。

*制度に関する詳細は会社の社労士・弁護士等、関連する士業の方へご確認ください。

 

【目次】
変形労働時間制とは
- 1ヶ月単位の変形労働時間制
- 1年単位の変形労働時間制
- フレックスタイム制
変形労働時間制と残業時間
裁量労働制との違い
導入の注意点
まとめ

 

変形労働時間制とは

変形労働時間制は、業務や職種の性質などで起こる繁閑に応じて、労働時間を設定して働く制度です。
この制度には労働基準法32条1項に定められている「1週間の労働時間が原則40時間を超えないこと」を条件に日々の労働時間を設定することが条件となります。

日ごと、週ごとに設定した労働時間を超えて働くことも可能ですが、その場合は労使協定を締結した上で残業手当を支給するなどの対応が必要になることもあります。
また、変形労働時間制には、「1ヶ月単位」「1年単位」「フレックスタイム」「1週間単位」の4種類あり、それぞれ特徴があります。

1ヶ月単位の変形労働時間制

1ヶ月の期間内で繁忙期・閑散期が予測出来る職種や業務に適している制度です。
例えば、経理業務で請求書作成や入金確認など、決まった時期にする業務がある場合は、忙しくなる日の労働日数や時間を長く、そうではない日の労働日数や時間を短く設定することができます。

1ヶ月単位の変形労働時間制の大きな特徴は、1ヶ月以内の週の平均労働時間が40時間におさまれば労働基準法に定められている「1週間40時間」の条件に反しないことです。
以下のように特定の週だけ40時間を超える労働時間を設定したとしても、他の週の労働時間で調整して、月の1週間あたりの平均労働時間が40時間におさまれば良いということになります。

1週目:38時間
2週目:40時間
3週目:42時間
4週目:40時間

制度の利用は就業規則に定めるだけでできますが、必要に応じて、労使協定を締結して労働基準法の「1週間40時間」の条件を超えた場合に備えおくのも良いと思います。
また、労働日数や時間の設定は対象の社員ではなく、会社が行なうようにしてください。

参考:厚生労働省|1ヶ月単位の変形労働時間制

 

1年単位の変形労働時間制

年間を通して繁忙期・閑散期の差がある職種や業務に適してい適している制度です。
例えば、総務業務で新卒採用の準備や入社手続き、決算業務など忙しい時期の労働日数や時間を長く、そうではない時期の労働日数や時間を短く設定することができます。

1年単位の変形労働時間制の大きな特徴は、1年間以内の週の平均労働時間が40時間におさまれば、労働基準法に定められている「1週間40時間」の条件に反しないことです。
ただし、年間の労働日数、日ごと週ごとの労働時間に上限がありますので、注意が必要です。

 

所定労働日数
・変形労働の対象期間が3ヶ月を超える場合、年間380日

参考:労働基準法施行規則第12条の4 第3項

所定労働時間
・1日の労働時間の上限:10時間
・1週間の労働時間の上限:52時間
*変形労働の対象期間が3ヶ月を超える場合、参考に定められている全ての要件に該当することが必須です。

参考:労働基準法施行規則第12条の4 第4項

 

制度の利用は、就業規則に定めるだけではなく労使協定の締結も必須になりますので、条件が厳しくなっています。
また、労働日数や時間の設定は、1ヶ月単位と同様に対象の社員ではなく、会社が行うようにしてください。

参考:厚生労働省|1年単位の変形労働時間制

 

フレックスタイム制

変形労働時間制の中で、制度の名称を見たり聞いたりした方が多いかと思います。
1ヶ月以内の一定期間(精算期間)の総労働時間を会社が設定をして、始業時間や終業時間は対象の社員自身に決めてもらう制度で、IT系やデザイン業での運用も増えてきました。

フレックスタイム制は、設定した精算期間が総労働時間を超えなければ、労働基準法で定めている「1日8時間、週40時間」を超えても時間外(残業)にはなりません。
ただし、精算期間の総労働時間を超えた場合は、時間外になりますので残業手当を支給するなどの対応が必要になります。

必ず出社しなければいけない「コアタイム」と、いつ出社・退社しても良い「フレキシブルタイム」というものに分かれているのがこの制度の大きな特徴です。
コアタイムとフレキシブタイムを設けていたり、フレキシブタイムのみの完全フレックスタイムで利用することも可能ですので、業種や職種にあわせて運用がしやすいと思います。

制度の利用は、就業規則に定めるだけではなく労使協定の締結も必須になります。詳しくは以下の参考をご確認ください。

参考:厚生労働省|フレックスタイム制の要件

 

変形労働時間制と残業時間

変形労働時間制では設定した労働時間を超えた場合、労働基準法第32条4の2に基いて残業手当を支払わなければなりません。しかし、通常の残業と要件が異なりますので注意が必要です。

 

1ヶ月単位・1年単位の変形労働時間制の残業の要件
・1日10時間、1週間42時間など法定労働時間の1日8時間や1週間40時間より長く設定した場合は、その設定時間を超えた労働時間

・1日8時間、1週間40時間の範囲内で労働時間を設定した場合は、その設定範囲を超えた労働時間

・1日7時間、1週間38時間など法定労働時間の1日8時間や1週間40時間より短く設定した場合は、1日・1週間の法定労働時間を超えた労働時間
*会社の就業規則や労使協定に会社独自の残業手当に関する規定がある場合は、それに基いて残業手当の支給をしても良いです。

 

フレックスタイム制の残業の要件
・1ヶ月の総労働時間を超えた労働時間

 

裁量労働制との違い

変形労働時間制は、1週間の平均労働時間が1週間の法定労働時間の枠に収まっていれば、1日または1週間の労働時間の制限を超えて働いていい制度になります。

それに対して、裁量労働制は制度の対象となる専門業務について、遂行方法や時間配分などを個人の裁量に任せる制度ですので、変形労働時間制とは異なります。また、「遅刻・早退・欠勤の概念」や「時間外(残業)の概念」にも違いがあります。

より詳しい違いについては、会社の社労士や弁護士など関連する士業の方へご確認ください。

 

遅刻・早退・欠勤の概念

変形労働時間制
設定した勤務時間に対して遅刻・早退・欠勤をすることです。また、労働時間が対象となる期間で設定した時間を下回ると、労働時間の不足となり、控除の対象となります。

 

裁量労働制
労使協定に定められている「みなし労働時間」があるため、仕事をしていれば会社に出社していなくてもみなし労働時間分働いたとみなされます。そのため、遅刻・早退・欠勤の概念、労働時間の不足の概念がないものとされています。

会社によっては業務にかかる工数管理や異なる雇用形態の社員との平等性の考慮などにより、遅刻・早退・欠勤を管理することもあるようです。

 

時間外(残業)の概念

変形労働時間制
1ヶ月単位や1年単位の変形労働時間制の場合は設定した労働時間よりも多く働くことです。フレックスタイム制の場合は、1ヶ月の総労働時間を超えた分が時間外(残業)になります。

ただし、1ヶ月単位や1年単位の変形労働時間制で、法定労働時間の40時間を満たない労働時間の設定で設定時間を超えて働いた場合は残業手当の支給になるケース、ならないケースに分かれますので、取扱いに注意しましょう。

詳しくは前項の「変形労働時間制と残業時間」でご覧いただき、会社の社労士や弁護士など関連する士業の方へご確認ください。

 

裁量労働制
みなし労働時間で管理しているため、時間外(残業)の概念がないものとされています。それに従い、残業手当もありません。

 

運用の注意点

変形労働時間制を正しく運用するために、守らなければならないことがあります。問題として取り上げられているものを中心に、注意しなければいけないポイントをまとめました。

より細かな運用の注意点などは、会社の社労士や弁護士など、関連する士業の方へご確認ください。

 

時間外(残業)の取り扱いを誤らないこと

前項の「変形労働時間制と残業時間」でまとめてあるとおり、設定した労働時間よりも多く働くと、その分が時間外(残業)として取り扱われます。

制度を利用すると残業手当をつけなくて良いと認識されていることが多く、労働トラブルに取り上げられている問題点の1つとなっていますので注意しましょう。

参考:労働基準法第32条4の2

 

設定した労働時間が法定労働時間の限度を超えないこと

変形労働時間制は労働時間の制限が全くないというわけではありません。
働きすぎることによる過労や体調不良といった労働衛生環境の悪化防止などにより、労働基準法に基づいた労働時間の上限が設定されています。

1ヶ月単位の変形労働時間制は、1週間の平均労働時間が1ヶ月以内で40時間であれば労働時間の上限はありません。
1年単位の変形労働時間制では、1日10時間、1週間52時間(設定期間が3ヶ月以上の場合は48時間)の労働時間の上限があるだけではなく労働日数も280日と限度があります。

また、制度を利用して設定したときの労働時間の総枠は、「40時間 × 設定期間の暦の数 ÷ 7日」で求めることが出来ます。
例えば、1ヶ月30日の月ですと「40時間 × 30日 ÷ 7日 = 171.4時間」と求められるので、暦の数が30日の月の労働時間の上限は「171.4時間」ということになります。

 

制度の適用が認められないケースがあること

一部を除き、業務や職種を選ばずに運用が出来る制度となりますが、次のような適用制限がありますので、該当する社員がいないか、出てきたときの対応方法をどうすべきかを考えなければなりません。

また、社員が働きやすい環境を考慮する点でも、本人から制度の制限に関する申出がなくても案内が出来るようにしておくと良いと思います。

 

妊産婦
本人から請求があった場合、変形労働時間制による労働することができません。

参考:労働基準法第66条1項

 

年少者
本人の請求の有無を問わず、変形労働時間制で労働ができません。
*1か月もしくは1年単位の変形労働時間制については、1日8時間以内、1週間48時間以内であれば可能な場合があります。

参考:労働基準法第60条

 

育児、介護をする者
育児や介護をしなければ行けない者に対して、必要な時間を確保できるように配慮をしなければいけません。

参考:労働基準法施行規則第12条の6

 

まとめ

会社で働く社員の働き方は個々のワークスタイル、ライフスタイルなどにより、働き方が多様化しています。

変形労働時間制は、多様な働き方に適した制度の1つで、社員の能力を十分に発揮させるための良い労働環境を構築するための手段のひとつとしての利用や、経理や総務等のバックオフィスとデザイナーやシステムエンジニアなどの異なる職種が混在している会社で、労働条件の均等化を図るために制度を採用するなど、様々な目的で利用されています。

この他にも労働制度は色々とありますので、まずは自社に活用出来る制度があるかを探してみて、内容を把握や検討をしてみてはいかがでしょうか。

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