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保険料の改定は年1回だけじゃない!算定基礎と月額変更の必要性と基本

2017-05-19 14:23:00
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私たちが毎月いただいている給与にはいくつか控除されているものがあるかと思いますが、そのひとつに社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)があり、どちらの保険料も病気、怪我、年金などの備えとして、会社と折半して支払っています。

実は、保険料の金額は給与額などの報酬によって決まっていて、保険料が報酬額に適切かを見直すための時期も大きく2つ存在します。それが「算定基礎」という年に1度だけ行う定時改定と、「月額変更」という報酬額の大幅な変更で定時改定が待てないときに行う随時改定です。

どちらも社会保険料を見直すためのもので類似していてわかりにくいところもありますので、過去の経験を交えながら運用のポイントなどまとめてみました。

 

*社会保険料の改定を行う際、必ず会社の社労士等、関連する士業の方にご確認ください。

 

【目次】
どうして保険料は改定されるのか
社会保険料が決まるタイミング
算定基礎(定時改定)のはじめかた
月額変更(随時改定)のはじめかた
まとめ

 

どうして保険料は改定されるのか

社会保険料は毎月の給与や賞与などの報酬によって金額が決まっているため、個々に負担する金額は変わります。

もし、給与が30万円の社員と20万円の社員で社会保険料額が同額だとしたら、公平に負担しているとは言えないですよね。

そのため、社会保険料は日本年金機構や健康保険組合で設けている保険料額表にある標準報酬の「等級」と「月額」に3ヶ月間の報酬額から算出した平均額を当てはめて決定し、保険料を公平に負担出来る仕組みになっています。

また、負担する保険料は常に適切でなければならないため、定期的に見直すタイミングがあります。

 

社会保険料が決まるタイミング

実は、給与計算時に社会保険料の再計算をしているわけではありません。

給与明細を見てみると、給与額は違うのに保険料が前後の明細に記載されてるものと変わっていない、という方もいるかもしれませんが、これは決められた見直しの時期や条件に沿って算出をしているからです。

算定基礎や月額変更を実施する前に、社会保険料の決まるタイミングを理解しておくと、手続き漏れの防止などにもつながるかと思いますのでおぼえておきましょう。

 

1.入社したとき

入社する社員が社会保険へ加入するために、会社は健康保険資格取得届を提出する際、給与の総支給額と標準報酬月額を記入しますよね。

この時点では、どれくらい残業するのかまでは決められないことがほとんどだと思いますので、雇用契約時に決めた給与などの報酬額と標準報酬月額から社会保険料を算出していくことになります。

詳しい標準報酬月額の決定方法は健康保険法第42条に定められていますのであわせて確認してください。

 

関連:社員の入社に関する手続きと流れ

 

しかし、入社時に決定した標準報酬月額と全く同じままと決して言えないので、以下のタイミングで変動することもあります。

 

2.算定基礎(定時改定)

算定基礎は、毎年7月に社会保険に加入しているすべての社員を対象に、4・5・6月の給与の平均額を算出して社会保険料を見直しになります。年に1度行われる大きな改定となりますので、1番覚えやすい重要なタイミングになります。

ここでは対象となる報酬の範囲が多く、残業手当も対象となりますので、この期間の給与額に反映される月に残業を多くすると標準報酬が上がり、保険料が増えてしまうことがあります。気になる方は残業時間を意識したほうがいいかもしれません。

 

3.月額変更(随時改定)

「2.算定基礎(定時改定)」で社会保険料が決まれば、基本的には来年の算定基礎までそのままになりますが、1年の間に昇格・降格や異動に伴う引越しなどで給与額や通勤などの手当額が大幅に変わる社員もいるかもしれません。

大幅に報酬が変わった場合、次回の算定基礎を待たず速やかに月額変更として、社会保険料の改定を行うことができます。

ここでは、3つのポイントをおさえておくと良いでしょう。

・2等級以上の変動がないと対象にならない
・基本給や手当といった固定的賃金の変動が対象なので、残業代などの非固定的賃金のみの変動は対象外となる
・算定基礎と月額変更がかぶった場合、月額変更を優先する

毎月などの一定の時期に一定金額支給される給与や手当を主な対象としている点が、算定基礎と異なるところになります。

 

4.育児休業等終了時改定・産前産後休業終了時改定

育児休業、産前産後休業で報酬額が下がった時、該当社員の申出により標準報酬月額を改定出来る制度になります。

どちらの休業も終了の翌日から3ヶ月間の平均報酬額から標準報酬月額を決定するもので、改定前と比較して標準報酬の等級が1等級の差でも対象となります。

例えば、3/31が育児休業等終了日または産前産後休業終了日の社員の場合、4・5・6月の3ヶ月間の対象算定期間の平均報酬額から標準報酬月額を決定します。そうすると翌月7月から改定された保険料に変わる、という流れになります。

算定基礎や月額変更と比べて忘れがちになることが多いものなので、担当者と連携をして、育児休業や産前産後休業の社員が現れたタイミングから把握や状況の確認をしておくと、改定のし忘れ防止などにもつながります。

 

参考:
日本年金機構|育児休業等終了時報酬月額変更届の提出
日本年金機構|産前産後休業終了時報酬月額変更届の提出

 

算定基礎(定時改定)のはじめかた

社会保険料は入社時に決まりますが、みなさんの報酬が必ずしも入社時のままとは限らないため、社員全員の給与などの報酬と社会保険料額に大きな差が出ないように見直す時期を年に1度必ず行うことになっています。

実務は会社によって社労士事務所に依頼をしたり、自社で行なうなど様々ですが、バックオフィスを担っている者としてどのように運用したほうがいいか知っておくべきものだと思います。

過去の運用経験を元に、算定基礎をはじめるために必要なポイントなどをまとめてみましたので、社内の運用に役立てていただければと思います。

 

運用のポイント1:算定基礎のおおよその仕組みを知る

対象範囲 7月1日時点で健康保険・厚生年金保険に加入している被保険者
*健康保険・厚生年金保険に加入していれば正社員だけではなく、パートも対象となりますので忘れずに
対象期間 4・5・6月
提出期間 7月1日〜7月10日まで(最終提出日が土日祝の場合は翌営業日までとなります)
提出物 ・被保険者報酬月額算定基礎届
・被保険者報酬月額算定基礎届 総括表
・被保険者報酬月額算定基礎届 総括表附票(雇用に関する調査票)
・70歳以上被用者算定基礎・月額変更・賞与支払届(該当者がいる場合のみ)
提出方法 以下のいずれかの方法になります
・届出用紙を窓口に持参または郵送
・電子媒体(CD、DVD、MO)
*詳しい方法はこちらでご確認ください。
電子申請
提出先 管轄の日本年金機構または加入している健康保険組合
新保険料の反映期間 当年9月〜翌年8月
*毎月給与計算をする際に社会保険料を前月分で控除していれば、給与には10月分の給与から反映されます。

 

運用のポイント2:業務の流れや運用ルールを決める

6月に入ると「算定基礎届」と「算定基礎届総括表」が届きます。今までの経験上、大まかに以下のような流れで動いているところがほとんどでした。

 

1.給与などの報酬額の確認
2.月額変更の対象者の確認
3.算定基礎届、算定基礎届総括表の作成
4.届出書の提出

 

例えば「1.給与などの報酬額の確認」の時に、Aさんは◯◯部、Bさんは△△部…などと分担して確認するなど、流れの1つずつを掘り下げてやらなければいけないことや注意点を洗い出していくと、運用ルールづくりやスケジュールの組みやすさにつながりますし、ここで決めて実施したものは次回にも活用できる資料にもなります。

あくまでも参考にしていただくための一例ですので、算定基礎の要件から外れない程度に会社に合った運用方法を検討してみてください。

社労士事務所に依頼する場合は、社労士さんによって実施方法が異なりますので、事前に打合せてスケジュールや提出しなければならない書類や情報のリストアップをしておくとスムーズです。

 

運用のポイント3:対象となる人ならない人を確認する

「運用のポイント1:算定基礎のおおよその仕組みを知る」で対象になる人の範囲はおおよそつかめたと思います。全ての人が対象のように見えますが、実は対象とならない人もいます。

ここで対象となる人、ならない人の条件を理解しておくと、算定基礎届の確認時や作成時に届出書に対象外なのに印字されている人、対象なのに印字されていない人の見分けが付きやすくなります。

以下の4つに該当する社員は対象となりませんので、うっかり記載して提出するなどしないように注意しましょう。

 

・当年の6月1日以降に社会保険の被保険者になった人
*原則、4・5・6月の3ヶ月の報酬を元に社会保険料額を算出するため、対象にはなりませんが届出書に印字がなければ氏名などを記載し、備考に「◯月◯日資格取得」と記載しておきましょう。

・4〜6月に給与や手当などの固定的賃金が変動し、標準報酬の等級が2等級以上変更になった人
*月額変更の要件に該当になるため、届出書の備考には「◯月月変」と記載をして月額変更届を提出します。月額変更はこの後お話していきます。

・当年の6月30日以前に退職した人
・労働時間の減少などで被保険者の資格を喪失した人
*算定基礎の対象外となるため、届出書に氏名などがあれば二重線で消します。

 

運用のポイント4:算出方法には複数パターンあることを理解しておく

標準報酬月額の算出は、雇用形態や社員の状況によって若干異なりがあります。それを理解した上で、基本の計算方法をおさえておくと、パート社員などの雇用形態の算定基礎にも対応しやすくなるかと思います。

以下の参考サイトには、届出書の記入方法や様々なケースが載っていますので、あわせてご覧ください。

 

参考:日本年金機構|定時決定のため、4月~6月の報酬月額の届出を行うとき

 

基本の計算方法

「4月の報酬 + 5月の報酬 + 6月の報酬 / 3ヶ月(計算対象の月数)」の計算式を使って算出した報酬の平均額から標準報酬月額を出していきます。ここで注意していただきたいのが、「支払基礎日数」です。

算定基礎届はそれぞれの月に支払われた報酬額を届出ますので、支払基礎日数は給与計算の締切日と支払日によって異なります。

例えば、4月の支払基礎日数を求めたい場合、月末締め翌月25日払いですと、3月1日〜3月31日が給与計算の対象期間となり、支払基礎日数は「31日」になります。
月末締め当月末払いですと、4月1日〜4月30日が給与計算の対象期間となり、支払基礎日数は「30日」になります。

実際に以下の条件を協会けんぽの平成29年4月度保険料額表(東京都)を使用して算出してみましょう。

 

給与形態:月給制、月末締め翌月25日払い
支払基礎日数・報酬:
4月
支払基礎日数:31日
報酬:240,000円
5月
支払基礎日数:30日
報酬:200,000円
6月
支払基礎日数:31日
報酬:180,000円

 

計算式を当てはめて計算すると「240,000円 + 200,000円 + 180,000円 / 3ヶ月 = 206,666円」となります。
この時、報酬の平均額に小数点が発生する場合がありますので、その時は小数点以下を切捨てて算出してください。算出した報酬の平均を保険料額表にあてはめると、標準報酬月額は「200,000円」となります。

報酬の内容ですが、基本給の他、通勤手当や残業手当など労働の対価として毎月支給されているものもあるかと思います。ここではそのようなものも含めた総支給額を報酬とし、出張旅費などの経費や退職手当、慶弔見舞金などの労働の対価とならないものは除いて計算します。

詳しい算出方法や報酬の対象となるものと対象外となるものは、「日本年金機構|算定基礎届の記入・提出ガイドブック(平成29年度)」に詳しく記載されています。
*ガイドブックは記事の公開時点の最新版になります。毎年公開されていますので日本年金機構のサイトにてご確認ください。

 

月額変更(随時改定)のはじめかた

算定基礎によって決まった社会保険料は、基本的には次の算定基礎まで変更されることはありません。

ですが、昇給・降給などで給与や手当などの報酬が大幅に変わり、3ヶ月以上その状態が続いた時は、次回の算定基礎の時期を待たず、速やかに社会保険料の見直しをしなければなりません。

過去の運用経験を元に、月額変更をはじめるために必要なものやポイントをまとめてみましたので、運用の参考にしていただければと思います。

 

運用のポイント1:月額変更のおおよその仕組みを知る

対象範囲

健康保険・厚生年金保険に加入している被保険者で以下の要件が加わります。

・昇給や降給により給与額、手当額などの固定的賃金に変動があった
*固定的賃金は、労働(稼働)時間などの実績と関係なく月単位などで一定額支給される報酬を指します。
・残業代などの非固定的賃金を含む報酬に2等級以上の変動があった。
・変動があった月から3ヶ月間の支払基礎日数(勤務日数)が17日以上だった
・変動した月から3ヶ月継続して2等級以上の変動があった

対象期間 報酬に変動が合った月から3ヶ月
*算定基礎と同時期に該当した場合は、月額変更を優先しましょう
提出期間 速やかに
提出物

・健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届

*社会保険料の改定月から60日以上遅延した場合や標準報酬月額が5等級以上下がる場合のみ、以下の書類が必要となります。
・変動があった月から改定月の前月分までの賃金台帳の写し
・変動があった月から改定月の前月分までの出勤簿の写し

提出方法 以下のいずれかの方法になります
・届出用紙を窓口に持参または郵送
・電子媒体(CD、DVD、MO)
*詳しい方法はこちらでご確認ください。
電子申請
提出先 管轄の日本年金機構または加入している健康保険組合
新保険料の反映期間 報酬の変動した月から4ヶ月後
*例えば、3月に昇給または降給などで給与が大幅に変動し、月額変更の要件を満たしていれば、6月から新しい社会保険料に改定となり、給与には、毎月給与計算をする際に社会保険料を前月分で控除していれば、7月分から反映されます。

 

運用のポイント2:社員の動きを把握する

月額変更は算定基礎と違い、特定時期に発生するわけではないので、常に社員の動きを把握しておく必要があります。

例えば、異動や昇給・降給などは人事が、給与計算は経理が、月額変更などの届出は総務が、などそれぞれで業務を担っていて状況を把握している場合でしたら、以下のよう流れを作っておくと手続き漏れを防げると思います。

 

1.毎月人事は総務に報告をする
月末や月初、入社の報告と一緒になど、タイミングを決めて報告をすると忘れないように決めておくと良いです。

2.総務は人事の報告を元に月額変更を行う(該当なしの場合はそのままで)
報告がきていない場合は確認連絡をするですとか、人事から報告をもらったら忘れないうちにまとめて確認するなど、常に気にかけておくことが大切になります。

3.人事または総務は経理に月額変更の対象者の報告をする
経理に報告がないと給与計算の時に改定前の保険料のまま計算してしまう、ということにもなりかねません。月額変更した時、届出が受理された時などタイミングを決めて忘れずに報告をしましょう。

 

月額変更をどの担当が行っている場合でも、不定期に発生する手続きのため、漏れのリスクはもちろんあります。

まずは、報告・連絡・相談の連携ルートを確立することと、「転勤による引越しで通勤手当が変わった」「昇給・降給をした」「婚姻をして家族手当がついた」など社員の変化が起こった都度、この人は月額変更になる人かな?と注意して見るようにしてみてください。

 

運用のポイント3:対象となる人ならない人を確認する

「運用のポイント1:月額変更のおおよその仕組みを知る」で対象になる人の範囲はおおよそつかめたと思いますので、ここで対象とならない人の条件を理解と、対象になるケースをご紹介します。

まず、対象とならない人は以下の3つに該当する人となります。

 

・変動した月から3ヶ月継続して2等級以上の変動があったが、支払基礎日数が17日未満の月がある

・残業手当などの非固定的賃金のみ増加して、変動前の標準報酬月額の等級が2等級以上あがった
*非固定的賃金は、労働(稼働)時間などの実績に応じて不定期かつ一定額ではない報酬を指します。

・休職による休職給を受けている

 

一見、給与などの固定的賃金だけが対象になるイメージを持ってしまうかもしれませんが、実はそういうわけではなく、残業手当などの非固定的賃金を含めた総支給額を元に月額変更をしています。

例えば、基本給与210,000円 + 役職手当40,000円が支給されていた社員が、役職手当がなくなり、基本給与210,000円 + 残業手当が3月に60,000円、4月に50,000円、6月に70,000円支給された場合も月額変更の対象となるのです。ここは結構見落としてしまう所になりますので、気をつけましょう。

 

参考:日本年金機構|随時改定

 

ポイント4:基本の計算方法と留意点を理解する

標準報酬月額の算出は、算定基礎と同じ計算式「◯月の報酬 + ◯月の報酬 + ◯月の報酬 / 3ヶ月」を使っていきます。

「◯月」は変動のあった月を当てはめてください。ただし、パートなど短時間労働者の月額変更は、支払基礎日数が11日以上、雇用が1年以上見込まれている、給与が月額8.8万円以上などと要件がありますので、以下の参考をご確認ください。

 

参考:
日本年金機構|月額変更届の提出

日本年金機構|随時改定

 

まとめ

個々の給与に適切な社会保険料を負担してもらうためには、算定基礎と月額変更の2つの大切な見直し作業があります。

いずれも社員の異動や人数が多くなると行わなければならない可能性が出てきますので、そのようなときこそ、漏れや誤りがないように届出ることが重要となってきます。

おさらいを兼ねて今回のポイントを総まとめしましたので、参考にしていただけると幸いです。

 

・社会保険料は個々の報酬額で決まる
・毎年7月に算定基礎を行い、保険料の改定を行なう
・報酬に変動があれば、速やかに月額変更を行い、保険料の改定を行う
・残業手当だけの変動では月額変更ができない
・算定基礎も月額変更も雇用形態に関わらず、健康保険に加入している人が対象
・保険料を出すための公式は「◯月の報酬 + ◯月の報酬 + ◯月の報酬 / 3ヶ月(計算対象の月数)」
・手続きをする際、人事・総務・経理の各担当者の連携が必須

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